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599 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 18:33:13 ID:XdWyw7wc
赤く燃える森。心奪われるような景色の中、私は命を奪われかけていた。
「お前だけでも逃げろ!」
仲間のパラディンが盾を構えながら叫んだ。同時に重く鈍い音。パラディンが苦悶の表情を浮かべる。
目の前には宙に浮いた南瓜。最初は何が起きたのかわからなかった。

私たちは気鋭のギルドで、二層まで探索の足を伸ばすほどだった。ここの強さは勿論、連係もバッチリ。確かな強さを持ったギルドだと確信していた。
だがそれは過信。

探索を続けていくうちに見つけた広い部屋。扉が幾つもあり、それを確認しながら歩いていたのだが――それがいけなかった。
そいつはまるで亡霊のように現れた。感知できない魔物。不意を突かれた私たちは瞬く間に隊列を乱されてしまう。おまけにブシドー渾身の一太刀でも傷一つ付かなかった時の私たちの絶望がわかるだろうか。

あれよあれよと言う間に仲間は倒れ、残るは私とパラディンだけになってしまっていた。
そしていままた――
「がふゥッ!」
ついにパラディンの盾が貫かれた。口からは弱々しい息と赤い血が零れる。
「に…逃げろ…」
ゾクリ…。震えていた体を死の恐怖が突き動かした。

逃げなきゃ…!
街でも可愛いと評判の顔は恐怖に歪み、生に縋ろうと手足をばたつかせる。
パラディンに構っていたためか南瓜は私に追いつけないようだ。
私はまだ生きられる!
そう思った瞬間、目の前に南瓜の大きな顔が浮かんだ。
「……え?」
その南瓜には前衛がまさに必死で付けた傷はなく、ということは新手なわけで……。よくよく目を凝らせば、この部屋中に南瓜が浮遊しているのがわかる。
「あ、あは……」
こちらに気づいたのか次々に集まってくる南瓜たち。赤かった視界が青で埋まっていく。
「あはははは……あは、あははあはあはあはあはあひ、アハハハハハハ――」
 
600 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 18:34:38 ID:XdWyw7wc
目が覚めた。
まだぼやける視界が映すのは燃えるような赤い森。
体の感覚が徐々に戻ってきて感じる『生』の実感。
私…生きてる……。
南瓜に囲まれてからの記憶がないが、生きているということはトドメを刺していかなかったのだろうか。そう言えば間抜けな顔をしていたし、それも有り得るだろう。
それにどうだっていい。生きているのだから。

「お、おい……」
その時、木の陰から声がした。見れば冒険者たちの姿が見える。帰ってこない私たちを捜索しにきてくれたのだろう。本当についている。これで助かった。
嬉しさのあまり私は思わず冒険者たちに駆け寄って抱き締めてしまった。


めしゃり。


あれ?なんだろうこの音。
「な、なにするんだお前は…!」
抱き締めきれなかった冒険者が青ざめた顔で言う。
心外だ。私はただ感謝の意を込めて抱きついただけなのに。
「早くその手を放せ!」
剣を突きつけられて思わず飛び退く。
すると、ぼたぼたと私の腕から真っ赤な液体とミンチになった冒険者がこぼれ落ちた。

何、コレ?
「ば、化け物め!」
私が化け物?冗談言わないでよ!……でもそう言えば心なしか冒険者たちが小さく見える。なぜだろうと手を伸ばしてみる。現れたのはケバケバしい色をした、太く醜い腕。
ダレノ腕?

地面を見る。ミンチの中に突き立つ剣に映る姿は醜い。歪な角に丸々と太った体には不釣り合いな小さな翼。頬から生えた牙の間から吐く息は灼熱。
まるで化け物だ。
いや、これは――

「ギゴオオオオ!」


私、と言おうとしたのに出てきたのは獣の咆吼だった。
「畜生!よくも仲間を!」
冒険者の剣が私の腕を切り裂く。
痛い。痛いよ。やめてよ。私は人間なのに。なんでこんな酷いことするの?嫌だよ。死にたくない。

ジャア殺シチャエ。

フッ、と一息。
それだけで冒険者はまるで紙屑のように私の吐息で灰になった。
急に静かになった森に独りは寂しい。
誰か私を助けて!
その願いさえも今や獣の叫びにしかならなかった……。


魔人がおにゃのこ説が強いけど、そうだとしたらかわいそすぎるよなあ・・・


601 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 18:46:29 ID:eKjtjMQi
>>599
>>600
泣いた


602 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 19:00:00 ID:iHxK5ebk
そうか、だから魔人たんには即死が効くんだな…畜生
オーバーロードめ…自分だけ独りで楽になりやがって…!


604 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 19:02:52 ID:J4drTgB5
>>602
バーロー「そんな君に夢と絶望をギフトする上帝逆鱗マラソンに参加する権利を贈呈しよう」
 

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