上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

724 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 01:33:05 ID:jmEALppc
『人間はいずれ私たちを脅かす存在となるでしょう』
私の言葉に雷竜姉さんが甲高い笑い声を上げた。
『あんな脆弱な存在に何ができるっていうの?
 せいぜい飛竜と命懸けでままごとするのがやっとでしょうに!』
『同族の悪口はやめろ。見苦しいぞ』
赤竜姉さんの言葉に笑いを納めたものの、見下したような目で私を見る。

『あたしたちはこの世界樹の頂点に君臨する竜族よ?
 それを越える存在があんなにいてたまるもんですか』
『確かに彼らは脆弱です。一人では樹海の下層でさえ生きてはいけないでしょう。
 しかし彼らの真の強さは仲間を守るときにこそ発揮されるでしょう。
 私が以前見た人間たちはそうでした。互いが互いを補って・・・・・・』
『それが弱者の考えだって言ってるのよ!』
『ですが・・・』
『そこまで言うなら証明してご覧なさいよ!
 って言っても、やりようがないだろうけどね。ホントにあんたはバカね』
そうかもしれない。
途切れ途切れの意識を必死に繋ぎあわせて氷竜は思った。
真っ白な雪は自分と冒険者たちの戦いの痕で赤く染みていた。氷細工のように透き通っていた肌は数多の傷で見る影もない。
傷に触れる雪が冷たく心地よいが、危うく眠ってしまいそうになった。
何とか首を動かして前方を見やる。氷竜の氷柱に貫かれ倒れた冒険者たちのさらに奥。雪に蹲る少女を見た。

彼らに全力を出させるために拐った少女。思った通り彼らは予想以上の力をだしてくれた。
謝らなければいけない。
氷竜が口を開こうとすると、それを察知したのかまだ立っている冒険者が少女を庇うように動いた。
自分も瀕死の傷を負っているというのに・・・やはり人間は素晴らしい。
フッと笑い、口を開く。同時に冒険者の剣が氷竜の喉笛を貫いた。

『ごめんね』

しかしその言葉は声にならず、弱々しい吐息とともに深々と積もる雪に溶けていった。


725 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 01:38:46 ID:jmEALppc
あたしが吠えるとそれにあわせて雷が街に降り注いだ。
高見から見下ろせば、人間どもは慌てふためき逃げ惑うばかり。
『氷竜を殺した奴らを出せッ!』
そう言ってやってもあたしの声に驚いたのか、よけいに混乱し出す始末だ。
こんなちっぽけな奴らが氷竜を?人間が氷竜を殺したなどというのはやはり違うように思えてきた。
となれば樹海にあたしたち竜族を脅かす存在がいることになる。
あたしはすぐさま樹海へと引き返した。


咳き込むのと同時に目が覚めた。目に映る桃色はあたしの寝床のものだ。けれどあたしは違和感を覚える。
体を起こそうとしても力が入らないのだ。踏ん張ってみるが結果は同じ。どころか血まで吐き出してしまう。

『そうか・・・あたし、人間に・・・』
負けたんだ、と言おうとしてまた血を吐いた。思い出した途端に体中に激痛が走った。
金に輝いていた自慢の体毛は薄汚れ、頑強を誇った鱗もそげ落ちてしまっていた。
トドメを刺されていないところを見ると、どうやら仮死状態を勘違いしたらしい。
やはり人間はバカだ。
『でも一番バカなのはあたしじゃない・・・』

氷竜の敵を討つつもりが返り討ち。それも相手は自分がバカにしていた人間だ。
『ぐ・・・』
何とか首だけでももたげることが出来たが、すでに己の体が限界にきていることは察している。
涙が止まらなかった。
『ごめん・・・ごめんね氷竜。敵・・・取ってあげられなかったよ。
 いつもバカにしてたけど、あんたのこと・・・好きだったのに』
息を吸い込むだけでも喉が裂けそうになる。

『ごめんね赤竜お姉ちゃん。先に・・・休んでるね?』
痛みなんて関係ない。この声よ届けとばかりにあたしは天に向かって吠えた。

この日、世界樹どころかハイ・ラガードまで響く、どこか哀しみに満ちた獣の咆哮があったという。


726 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 01:41:26 ID:r7XOy2I2
おお…!氷竜にこんなフォローが入るとは。
いや素晴らしい


727 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 01:47:27 ID:jmEALppc

オオオォォォォ・・・!

断末魔のような咆哮は、それでもなお世界樹の木々を揺らし冒険者を震え上がらせた。
だが、その轟きが止んでしばしの沈黙の後、樹海の偉大なる存在は遂にその首をを地に預けた。

体には無数の傷が刻まれ、その偉容を覆う灼熱のごとき鱗は所々で地肌を晒し、
背から伸びる棘は牙や爪と共に砕け折れ大地に突き立つ。

折れた牙の隙間から流れる、鱗よりも幾分か黒ずんだ紅い液体が
燃える樹海をさらに赤く染めていくのを見ながら、

けれど冒険者たちは武器から手を放すことが出来ずにいる。
目が――もはや冒険者たちと変わらぬ高さにまで落ちた目が、未だに輝き彼らを見ているのだ。
『かかってこい』
そう言っている。もはや己の翼を持ち上げる力さえ残されていないのは明白だというのに、だ。


『人間は素晴らしい生き物です。
 雷竜姉さんは認めないでしょうけど、いずれ私たちも倒されるかも知れませんね』
『わかっている。我々は討ち倒されるために存在するのだ』

お前の言う通りになったな氷竜。お前を倒した人間は強いな雷竜。
だが、このままでは死なん。
いずれ乗り越えられる頂点だろうと、我は偉大なる赤竜!我が名は絶対の死を意味するのだ!

『受けよ!我が渾身のファイアブレスをッ!』

渾身の力で首を持ち上げ息を吸い込む。肺から喉を通り吐き出される息は灼熱。真っ赤な息吹は冒険者を呑み込んだ。
赤竜最後の一撃に相応しい攻撃は、しかし一人の冒険者の盾によって防がれた。
その背後から別の冒険者が飛び出してきた。大きな剣を掲げ、赤竜の眼前に迫る。

越えていくがいい人間よ。そして忘れるな。かつて貴様らの遥か頭上で最強を誇った我ら三竜を!
いつの日か我らが再び貴様らを越える日が来ることを!


轟く咆哮は天を裂くほどに鳴り響いた。


728 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 01:49:33 ID:jmEALppc
三竜撃破記念。Ⅲでは強化されて帰ってくると信じて・・・
氷竜はロリコンじゃない派はやっぱり少数だろうか?
 

コメント
コメントの投稿
URL:
TEXT:
PASS:
SECRET: 管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。