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907 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 06:30:46 ID:dYYnVwEL
エトリアもあと少しでお別れか
真龍の剣を誰に持たせるか迷ったものだ
長文失礼
 
「相変わらず酷い顔をしているな」
グラスの中の水が無くなった頃、聞き覚えのある声がした。
いいんちょと呼ばれる眼鏡のアルケミスト。私の元仲間だ。

「最深階で樹海の核らしき化け物を発見した。多分、次が最後の戦いになる」
「あっそ」
「もう一度私たちと一緒に戦ってくれないか?」
「毎度しつこいわね。答えは変わんないわよ。もう、嫌」

私は20Fまでしか冒険に参加していない。
理由は色々ある。
イワオと相打ちになって長期療養が必要になったから。
一方的な虐殺を強いられて嫌気が差したから。
信じていた人たちに裏切られたことを知ったから。
迷宮を踏破することで大好きな街が廃れると気づいたから。

あれから新しい仕事を始める気も起きず、金鹿の酒場で飲んだくれる日々。
サクヤさんには随分とツケがたまった。
このままダメな大人になっていくんだろう。

「やれやれ……。今日は渡したいものがあるんだがな」
いいんちょは背負っていた剣をテーブルにおろした。
大きい。私の身の丈の三分の二ほどはあるか。
「真龍の剣だ。やっと完成したよ」
「三竜の逆鱗を揃えたというの……!? で、何? 自慢しに来たの?」
「ははは、君じゃあるまいし。――ドリ子、君にこれを託す」


908 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 06:31:44 ID:dYYnVwEL
言った意味がわからなかった。
この剣のために、みんながどれだけ三竜と戦い続けたか知らないわけじゃない。
こんな大事な物、毎日飲んだくれていた私が受け取っていいはずがない。
もちろん、迷うことなく断った。

「第一、デコはどうしたの。剣なんて剣士が使ってこそでしょ」
仲間のソードマンの名前を出した途端、いいんちょは暗い顔で俯き出した。
「最後の逆鱗を手に入れたときにね……」
一度言葉を切り、大剣をそっと一瞥した。
「……氷槍に貫かれて、重症だ。当分、冒険には出られない。
 言ってたよ。自分の代わりに、この剣で君に戦って欲しいと」

もう一度丁重にお断りした。
デコたちが命がけで作り上げた剣なんだ、これは。
ますます私などお呼びじゃない。
デコが復帰してから自分で使えばいい。それが相応しい。

「……知ってるか? デコの奴、君がいなくなってから斧使いになったんだ。
 普段絶対に我侭を言わないあいつが、周囲の反対を押し切ってね。
 どうしても星砕きの戦斧で戦いたいとさ」
「その斧って……」

冒険をやめてから一度だけ、仕方なく樹海に入ったことがある。
ゴーレムの腕を丸ごと使えば、最高の斧が作れると誰かが言い出したらしい。
そのために、どうしてもあたしの技が必要だと頼みこまれたからだ。

「ドリ子さんのおかげで手に入れた斧で戦えば、一緒に戦ってる気がするはずだ、と。
 あれから一度も手放さなかったよ、あの斧を。貫かれたあの時も」


909 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 06:32:18 ID:dYYnVwEL
何やってんのよ、あいつは。
勝手に飲んだくれと一緒に戦ってる気になって。
なんか目の前が曇ってきた。もう遅いし眠いんだろう。

「あいつはね、君と一緒に冒険したかったんだ。
 無理強いはしない。でもできるなら、その想いを受けて――」
「あー、浪花節はウンザリよ。ツケがたまってるのよね。これ売ってくるわ」
いいんちょは少しだけ驚き、微かに笑った。
「これは君のものだからね。好きにするといい」

店を出て、以前特訓に使っていた広場の片隅に向かった。
ストーカーが一人いるらしいが気にしない。

鞘から抜かれた刀身は、街の明かりを浴びて微かに輝いていた。
柄を握って振り上げてみる。
不思議だ。到底扱いきれる大きさじゃないのに、重さを感じさせない。
信じられないくらい手に馴染む。

「……悪くないじゃない」

背後から声がする。
いつまでも私の帰りを待つ未練がましい仲間の声が。

「どうする? 君はそれでひと暴れしてもいいし、売り払ってもいいわけだが」


910 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 09:47:42 ID:Me/Pg0wM
ドリ子がこんなに渋くなるとは
 

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